宇宙関連巡礼の旅 - Weblog版 - 種子島宇宙センター塩害の話

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

にほんブログ村 科学ブログ 天文学・宇宙科学・天体観測へ
にほんブログ村

種子島宇宙センター塩害の話

 そもそも、あんな海っぺりに作っておいて塩害被害云々って、それは当たり前ではないのか。

 新聞記事によれば、種子島宇宙センター(TNSC)で塩害被害が相当深刻な問題という報道がされている。でも、よく考えて欲しい。あんな位置に作ったらどうなるかなんて、設計どころか誘致した段階で判っていることではないのか、と。

 種子島の宇宙開発はN-Iから始まり、次々とH-IIA/Bまで駆け抜けた。その間、ロケット機体のバージョンがあがれば、射場設備もそれに合わせて大改修を行っていたのだから、塩害が深刻になる前に改修できていたわけだ。今回、H-IIA/Bで初めて長期運用になったことで、今まで大改修に助けられてきた更新作業が露呈しただけじゃないのか、と思う。

 塩害は日本では非常にポピュラーだ。沿岸部に住む人は車の下回りにサビ止め加工をすることが多いのも、そのためだ。ましてや、南国特有の湿度と海岸線にせり出すような位置に建設しているのだから、被害は想定内で済まさなければならないことではないのだろうか。

 昨年、H-IIBの打ち上げ見学でTNSCに向かい、VBAをロケットの丘から撮影した。その時の感じではさほど塩害が出ているという感じはしなかったが、何分距離がありすぎるので細部まではわからない。J-Iの大崎射点は整備されずに放置してあるだけあって、ひと目で状況がわかる。まぁ、これはもう放置と決め込んだのだから当然といえば当然ではあるのだが…。旧NASDAの施設であり、"高コスト"で有名なTNSCなので、塩害に対しても相当額使っていると思ったのだが、実際はそうでもなかったようだ。

 なにもこのことは種子島だけの問題じゃない。内之浦宇宙空間観測所(USC)は"とっくの昔に"始まっていたのである。まぁ、USCの場合は、塩害だけではなく『老朽化』という根本的な問題もあるのだが、「雨漏りがするので機器類を端っこに寄せてビニールカバーをかける」という話が事実ということを、笑っている場合ではないだろう。

543509_2999393651.jpg

 M台地にある「M組立棟」の写真がこれ。近年の撮影ではなく、M-V-7号機打ち上げ直前の6月に撮影したものだ。屋上のブルーシートがあるが、これは雨漏り工事中だという。打ち上げオペレーションが開始され、M台地への一般人立ち入りが規制されている時期でも、補修しないと組み立て工程に影響がでる可能性があったということだろう。まぁ、USCは旧ISAS時代からこんな感じで、地上設備に金をかけるなら探査機やロケットに予算を突っ込む傾向にあった。それでも自分たちの予算で行っていたことなので、現在の予算獲得に比べればまだ納得できる部分が多かったという。

 固体燃料の詰まったロケット本体を保管する「推薬庫」では、"侵入者警報が鳴ったので確認しにいったらカニが感電死してた"という話も聞くほどに、どこかに穴が開いてても不思議じゃない状況だ。探査機を保管するクリーンルームにヘビが出たなんて話も聞いたなぁ。

 話をTNSCに戻すと、塩害は今更始まった話じゃない。どうも「わざとこの時期に話題にした」としか思えない。そう、"次期固体ロケット射場問題"だ。

 種子島に集約したい派の動きが活発になっているのは現状疑いの余地がない。ここで「現役のH-IIA/Bの射場を更新する」という予算を獲得したいのは理解できる。なにせ国際公約などが絡んでくる以上、H-IIA/Bの設備は維持しなければならないからだ。これについては同意する。だが、ここにどうも裏があるように感じる。
 穿った考え方が許されるのならば、"改修するなら次期固体も打ち上げられるように改造したほうがUSCに作るよりトータルで安くなりますよ"というアピールなんじゃないか、と。そう、J-Iの大崎射点ではなく、吉信射点で行うようにしてしまえ、ということだ。
 確かに次期固体ロケットはH-IIA/Bに比べたら小さいからVBA自体を建て替える必要はない。どちらかというと小さいことが問題ではなく"既存の設備との融合性は限りなく低い"ことが重要であり、もし種子島で吉信射点となれば『大改修しないと使えない』という大義名分が手に入るわけだ。トータルコストとしても安くなるだろうから、このセールストークは何かと効いてくるだろう。

 だが、本当に安くなるのか。次期固体ロケットの射場案を見る限り、USCでも既存設備を最大限に活用し、最低限の改修と予算で射場整備を行うとしている。最初期の案では、現存しているM発射設備のランチャーを改造してM発射塔までも再利用する案があったくらいだ。それを破棄して新規に作る案になっていることから、予算的には改造よりも安いということだろう。
 かたやTNSCではどうか。大型ロケット組立棟(VBA)もH-II時代からH-IIAに合わせて大改造増築が行われているが、左右で扱えるH-IIA/Bの仕様が異なる。さらに、VBAから射点1,2への移動は、ドーリーを使って運ぶので、こちらも改修が必要だ。もっというと、H-IIA/Bと次期固体ロケットは制御信号が異なるため、そちらも改修しなければならないだろう。とにかく、共通点が見当たらないくらい違いが大きいのだ。

 よくいう言葉に「下手な改造は新造するよりも高く付く」というのがある。次期固体ロケットとH-IIA/Bのハイブリッドにするよりも、おのおの独立させたほうが安価で確実で効率のいい射場が出来上がることは明白ではないだろうか。

 それに射場は複数運用が望ましい。なにもかも一極集中だけが効率化につながると考えるのはよろしくない。

 そう考えると、やはりJAXAへの統合は間違いではなかったのだろうか。競争する企業(組織)があるからこそ、競争原理が働いてコストも技術も切磋琢磨して向上していくのではないだろうか。
 すでに旧ISASの「よき時代」は崩壊した、いや、崩壊させられてしまった。だが、まだ遅くはない。JAXAから旧NASDAと旧ISAS/旧NALの分野で再度分割したらどうだ。旧ISAS時代の予算規模は200億円だ。旧NALを合わせても300億円もあればいいだろう。その予算では厳しい現状があるのも分かってはいるが、対抗馬として1/10の予算で同じような成果を出したとしたら、それはもう『勝ち=価値』なのだから。


小惑星探査機 はやぶさの大冒険小惑星探査機 はやぶさの大冒険
(2010/07/29)
山根 一眞

商品詳細を見る
スポンサーサイト

にほんブログ村 科学ブログ 天文学・宇宙科学・天体観測へ
にほんブログ村

コメント

非公開コメント

プロフィール

Author:おかざー
"馬車道Groove."代表らしい。
宇宙関連の同人誌を出したり、打上げや施設見学いったりしてます。

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム
最新記事
カテゴリ
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
RSS
アクセスカウンター
twitter
今日は何の日?
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。